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「裁判手続のIT化-パート2」

2018.10.05|甲斐野 正行

  パート1でみましたように、政府の「未来投資戦略2017」の一環として、内閣官房日本経済再生総合事務局に裁判手続等のIT化検討会が発足し、今年3月30日に検討結果として、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-」が公表されましたが、この「3つのe」とは、

①「e提出(efiling)」

②「e事件管理eCase Management)」

③「e法廷eCourt)」

とされています。

 

 このうち、まず①の「e提出」は、概要、

24時間365日利用可能な、電子情報によるオンライン提出へ極力移行し、一本化する方向を目指す。

オンラインでの訴え提起(紙媒体で作成されたものの電子化含む)に移行する方向性が相当である。

アクセス方法としては、裁判所の専用システムへのアップロードなど様々な方法を検討する。

提訴手数料の支払について、オンラインでの納付の実現が望ましい。

訴状や判決書の送達について、訴訟記録の電子化に即した送達の在り方の検討が相当であり、電子記録と紙媒体との併存を極力避ける方向で、電子送達の可能性を検討する。

準備書面等の提出、やり取りも、オンラインでの迅速かつ効率的な方策を検討する。

文書送付嘱託や調査嘱託等、第三者から情報が提出される場合の対応も、ITツールを活用しながら迅速かつ効率的に行う方策を検討する。

ということが考えられています。

 

 私たちは、これまで紙ベースでずっとやってきていますので、紙ベースの裁判運用に対する愛着や信用が抜きがたいところがありますが、それとは別に、e提出のネックになるだろうと考えるのが、本人訴訟で、その本人がIT弱者の場合に、誰がどこまでフォローするか、という問題と、「送達」の問題です。

 前者はまだ裁判所書記官らの負担と工夫でなんとかなるでしょうが、後者はちょっと難問です。

 法律上の「送達」とは、当事者その他の訴訟関係人に対し、法定の方式に従い、訴訟上の書類を交付し、又は交付を受ける機会を与えることをいい、訴状や答弁書等の裁判資料が、裁判所と相手方に送達されていること、あるいは、呼出状や判決書が裁判所から当事者に送達されていること、が、当事者の権利を守るために最低限必要なことと考えられ、これが控訴期限等、訴訟法上の各種期限の起算点の節目にもされるなど、送達(+その証明)がなされないと、次の手続に進むことができません。

 相手方が不在であったり、その所在が分からなかったりして、郵便が届かない場合にどこまでのことをしなければいけないのか、は、現行法でも実務的に結構難渋することが多いところです。

 では、電子送達をどのように実現するか?ですが、まず使えるITツールの目処がないと議論ができません。とりあえず、現在、日本郵便が提供しているサービスであるマイポスト(My Post)の利用が考えられ(https://www.post.japanpost.jp/service/mypost/index.html)、これを活用すれば、あながち無理でもないように思われます。ただ、これも当事者がマイポストの利用を届け出た後はいいのですが、少なくとも被告についてはまだマイポストの利用が届け出られていない訴状の送達の段階で、被告本人に送達されたことの確認はどのように行うか、や、e提出用システムのIDやパスワードの発行はいつ配付するのか、といった付随的だけど重要な問題は残ります。

 

 お隣韓国では、既にIT化を実施していて、以下のような手続の流れのようです。

①書面作成画面に従って、訴状を作成→②訴状完成後、全てのデータに対して電子署名を付与して送信→③訴状記載の訴額により、自動的に手続費用と送達費用が計算され、支払は、口座振替・クレジットカード・モバイル決済等の方法で行う→④原告が電子訴訟システムを利用して訴えを提起した場合、裁判所が、郵便によって、被告に訴状を送達→⑤被告に送達される文書中に、電子訴訟遂行用の情報が記載されており、その情報を利用して被告は電子訴訟か、紙による書面提出を選択

 さすがに完全なペーパーレス化はできていないようですが、少なくとも訴状送達段階ではやむを得ないようにも思われますし、遅れてIT化に取り組む我が国としては、とりあえず経過的な方法として、参考になるかと思います。

 

 次回は、②「e事件管理」を見ていきたいと思います。

                                                                         以 上

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