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「改正債権法拾遺~施行までに整理しておくべきこと①-経過措置その1」

2019.12.03|甲斐野 正行

2017年に成立、公布された改正債権法の施行が来年4月1日に迫ってきましたが、今更ながらに検討すべき問題が意外とあるようで、裁判所でも内部で研究をしていると聞いています。

そこで、何回かに分けて、検討すべき問題を見ていこうと思います。

 

今回は、まず経過措置です。

 

最近だと、消費税率の10%への変更について、例えば、2019年9月に映画の前売券を買って10月に映画館に行った場合、消費税率は8%なのか10%なのかなどと、9月までは各種報道で経過措置の話題が毎日のようにされていました。

 

法改正があると、我々実務家としては、まず改正法が何時から施行されて、施行時前後で改正法の適用関係がどうなるのか、が一番気になるところで、これをどうするかを決めるのが「経過措置」です(改正法附則2条~37条)が、同じ経過措置と言っても、改正債権法の経過措置は、消費税法の経過措置とは対称的です。

店頭で買い物をして、商品の授受と代金の支払をその場で済ませる場合のように、単発的な法律行為で、一回的な行為で完結する場合であれば、その買い物が改正法施行日前なら旧法が適用され、施行日以後なら改正法が適用されるというのは分かりやすく、その限りでは消費税法も改正債権法も同じになるのですが、実際の取引は、契約と、その履行としての納品やサービスの提供、代金の支払とは時期的にずれることが多く、改正法施行日をまたがることも少なくありません。そのような場合の処理をどうするかに、その法律の性格が現れます。

 

消費税法の場合は、物品やサービスを消費することについて課税するものですから、物品の納品やサービスの提供、代金の支払が実際にされる時期が基準とされるのが原則で、例えば、家のリフォーム請負工事などの工事請負契約では、契約が2019年9月までにされていても、実際の工事引渡が10月以降になるのであれば、税率は10%が適用されます。契約はバックデートもできますし、納品や代金支払の方が後でその有無や時期の確認が確実にでき、税金の取りっぱぐれがないという側面もあるでしょう。

ただし、その原則を貫くと、継続的な取引で代金を前払いしていたりとかする場合に事後処理が面倒になったり、消費マインドへの悪影響のおそれがあるなどの問題もあるため、特例として、2019年3月31日までに契約をしていれば、引渡が10月以降にずれ込んでも8%が適用される経過措置が設けられています。

また、冒頭の映画前売券の場合は、2019年9月末までに代金を支払って購入したものに関しては、実際にそれを使用しての映画館入場が10月以降でも8%が適用されるという経過措置が設けられています。

つまり、消費税法では、意思表示や法律行為としての契約の時期ではなく、実際の消費財の消費時期によって改正法の適用が分かれるのが原則で、例外的に経過措置により契約時期によって旧法が適用される場合が定められているわけです。

 

これに対し、改正債権法では、意思表示や法律行為の規律とそれによる取引の安全が目的ですから、意思表示や法律行為のされた時期が改正法適用の基準になります。

意思表示や法律行為をした当事者としては、それをした時点での法令が適用され、その適用の効果を受けると考えるのが普通ですから、その予測を保護しようということです。

そこで例えば、附則34条1項は、「施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第589条に規定する消費貸借の預託を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。」として、典型的な契約についてこの原則を規定しています。

「なお従前の例による」というのは難しい言い回しですが、こうした経過規定で使用される言葉遣いで、改正前の法令自体は改正により失効したのですが、「なお従前の例による」という規定が根拠となって、改正前の法令が適用されるということです。

 

ただし、例外的に、当事者の予測を害するとは考えにくく、しかも、改正法の適用範囲を広げることで法律関係の安定化・明確化などの政策的な必要性が高いなどの場合に、この原則よりも改正法の適用範囲を広げる場合があります(附則33条1項、35条)。

 

 次回以降、もう少し、経過規定を見ていきます。

以 上

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