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弁護士ブログ

「逮捕状など刑事手続もIT化」

2020.08.19|甲斐野 正行

 報道によりますと、政府は先月15日、IT戦略として、今現に進めている民事裁判のIT化だけでなく、逮捕状の請求や発付など刑事手続のオンライン化を目指すことを明らかにしたそうです。

 

 ご存知のとおり、警察が容疑者を逮捕したり、関係先を家宅捜索したりする場合、裁判官の令状が必要であるのが原則です。

  この場合、裁判官は警察が令状を求めれば機械的に出すわけではなく、その時点で警察が収集して提出してきた証拠を検討し、相当な嫌疑と逮捕等の必要性があるかどうかを審査します。場合によっては、担当の警察官を呼んで、直接質問したりすることもあります。

 

 平日の日中は、裁判官は、裁判所の裁判官室等でこうした検討をするわけですが、問題は夜間や休日などの通常の業務時間外です。

 以前は、深夜に夜間当番の裁判官の自宅(官舎のことが多い)に電話がかかって、裁判官をたたき起こし、裁判所職員や警察官が裁判官の自宅に事件記録を持ってきて、裁判官が記録を検討して令状発付手続をするというのがよくある風景で、支部でも以前は時間外の令状事務をしていましたから、同様でした。

 

 しかし最近は、裁判所が事務の集約と軽減のために、支部での時間外の令状の取扱いはできるだけせずに、地裁本庁に集約することが多くなっています。

 ところが、警察のほうはそうはいかず、地裁本庁のある県庁所在地から遠い場所の警察の場合は、証拠記録を本庁まで運んでいき、令状とともに持ち帰ることをする手間と時間はかなり大きな負担となると思われます。実際、車で往復するだけで数時間かかる場所もあります。更に裁判官の検討時間や発付のための事務手続に要する時間も入れると更にかかります。

 

 そして、このように時間がかかるとなると、緊急を要する令状の場合は致命的になることもあり得ます。

  例えば、酒酔い運転や酒気帯び運転は夜間に摘発されることが多いのですが、通常は風船を吹かせたり、アルコールチェッカーに息を吐かせて、その呼気からアルコール量を計ることが任意処分として行われます。

 ただし、これを被疑者が拒否した場合、採血して血液中のアルコール量を調べねばならず、これは令状が必要な強制処分です。

 しかし、血中アルコールは時間経過により低減していきますから、できるだけ早く調べる必要がありますが、令状をとるのに何時間もかかったりすると、採血時点では法律が規定している基準値を下回ってしまい、検挙できないということもあり得ます。

 覚せい剤などの薬物犯罪にしても、被疑者が任意に尿を提出しないとなると、令状を取って強制的に採尿しなければなりませんが、これもアルコールよりは長いものの、薬物成分が尿に検出される時間的制約がありますから、令状を請求した段階で既に薬物を摂取してからかなり時間が経っていたりすると、やはり同様の問題が出てきます。

 

 そうすると、オンラインで請求や発付ができれば、迅速化と現場の負担軽減ができますし、対人接触が減る分、新型コロナの時節柄、感染症対策上も望ましいといえそうです。

 

 ただし、令状審査は、証拠資料を裁判官が読んで検討することが必須ですから、オンラインで行おうとすると、証拠資料を含む書類の電子化が必要であり、電子化の手間自体がどれだけかかるのかという問題があります。

 紙媒体を1枚1枚PDFに落とす作業をしなければならないとなると、大部の記録の場合、運んだ方が負担が少ないということもありそうですし、セキュリティー面の問題もクリアする必要があります。

 

 政府や最高裁は、こうした令状手続だけでなく、オンラインを活用した公判も検討しているようですが、システム構築やセキュリティー面での課題の洗い出し、刑事訴訟法改正なども考えると、実現には結構時間がかかりそうです。

                                                                        以 上

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