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弁護士ブログ

「大学入試への民間英語試験導入延期~もう止めれば(^_^;)」

2019.11.01|甲斐野 正行

萩生田大臣の「身の丈」発言で、ここのところ大学入試への民間英語試験導入の当否がマスコミを賑わせていましたが、昨日(令和元年10月31日)、2020年度からの導入は延期するとの報道がありました。

大臣の相次ぐ辞任の上に、この問題が政治問題化することは避けたいというところでしょうが、やはり第1は、この制度自体に内在する欠陥でしょう。

私の周りの英語を生業としている人たちは、従前から、これは酷い制度だと言っていました。

文科省の目的は、英語を聴く、読む、書く、話す、という4技能を計る大学入試とすることで、高校までの英語教育において、特に聞く、話す技能を充実させること(そうせざるを得ないようにすること)にあるようですが、それなら大学入試センターが自前で入試問題を作成・採点せずに(これはどうも能力的に自信がないということのようです)、外部委託すること自体がおかしな話です。「書く」「話す」という技能は、採点する側にも高い技能が必要なのですが、そうは言っても、入試問題を作り採点する側にそうした技能がないのに、受験生にそれを求めるというのは、本末転倒でしょう。

しかも、外部委託する民間試験自体、英検とTOEFL、ケンブリッジ英検ほかを比較すると、内容もレベルも検定料も違いすぎるので、全体入試の物差しにするのは根本的な問題があります。萩生田大臣の発言とそれを問題視するマスコミの議論では、受験料の高さや実施地域の不公平さにスポットが当たっていますが、それはそのとおりとして、むしろ一次試験という全体試験としての適切性を問題にすべきでしょう。

 

民間英語試験自体、いろいろ問題を内在させているのは英語関係者なら常識であり、例えば、英検では、単語がやたら難しく、特に1級では、実際には使わないような単語までカバーして覚えなければならない(漢字検定の難漢字みたいなもので文科省の期待している4技能とは直接結びつかない)とか、面接試験の面接委員を確保するのに汲々としており、正直なところ、ハア?というような発音で話す委員も少なからずいて、試験としての信用性に疑問を呈する意見もあります。

 

また、TOEFLやアイエルツ、ケンブリッジ英検は、上級者にはシビアで良い試験(出来る人の実力は計れる)ですが、逆に高校英語偏差値の例えば40と55辺りの違いをちゃんとスコア化できるのか(それには向いていない)、という問題もあります。

公平性を確保するために、検定料を国が補助して全受験生にTOEFLを受けさせろという識者もいるようですが、上記の問題を考えると、英語偏差値が高くない受験生には無駄ではないかということになります。

 

東大を始めとして有力大学は、入試として民間英語試験をカウントしない姿勢を既に示していますが、それはそういうことなんじゃないの?ということかと思います。

 

一次試験は全体試験であることからすると、採点の手間を考えて、計りやすい「聴く」と「読む」だけ従来のセンター英語でテストするのは合理的ですし、あとはより高い教育・研究を実施する各大学独自に二次試験をすればよいように思います。センター英語自体は、決して悪い試験ではなく、それはそれで自信を持てばいいのに、どうも文科省は(マスコミも含めてでしょうか)、英語を話すことに前のめりになりすぎて、問題の本質を見失っているように見受けます。

 

英語に関しては、小学校から必須にすることになりましたが、「ちゃんとした」外国語を話すには、その前提として、話す内容をきちんと日本語で思考を深める力が大事だというのは、鳥飼久美子さんら英語に堪能な方々がつとに言っておられることです。それがなければ、結局、スカスカの英語を口から出すだけで、外国人との「会話」にはならず、教養のない日本人として認識されるだけに終わってしまいます。

アナウンサーや新聞記者のように、言葉を生業としている人たちですら、日本語の素養のなさに呆れることが多い昨今、日本語で考える力を軽視してはならないと考えています。その意味で、最近、よくある英語だけで授業をするという学校のあり方には非常に危惧を覚えます(手振り身振りで外国人講師とコミュニケーションをとっても、それは英語の上達にはなりません。)。

 

以 上

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