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弁護士ブログ

「元号と商標・商号」

2019.04.15|甲斐野 正行

改元が間近になりましたが、そのためか現在の元号の「平成」や、新元号となる「令和」を商標登録できるのか、というご相談があります。

元号は日本であれば誰でも知っているし、いろんな場面で言葉として出てきますから、これを商標登録して自社商品に独占使用できるとなると、そのメリットは絶大ですが、結論的には、どちらも駄目です。

 

商標法316号は、商標登録を受けることができない商標として

「その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標」

と定めており、これの実務的な基準は特許庁が「商標審査基準」を定めていますが、従前の「商標審査基準」(以下「旧基準」)では

「商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号(※商標法3条1項6号のこと)に該当すると判断する。」

と定めていました。

これによると、改元前の現時点では、「平成」は商標登録できないのは明らかですが、逆に「現元号」でなければ、つまり、旧元号(昭和、大正、明治、慶応など)は商標登録をすることはできそうですし、改元後は「平成」も商標登録できることになるようにも読めます。

 

しかし、実務的には、旧基準のもとでも、現元号かどうかを問わず、原則として元号の商標登録は認めていませんでした。元号は日本で普遍的に使用されるものであるからこそ、誰かに独占的に使用させると、経済秩序が守れないからです。

ただ、明文上「旧元号」の扱いが規定されていなかったことから、今回の改元に際して「平成」を商標登録しようとする人が押し寄せ、実務的に混乱が生じるおそれがあるため、今般、商標審査基準を、元号を表示する商標について、現元号以外の元号についても、その元号が、元号として認識されるにすぎないものである場合には、商標法316号に該当することを明確にする内容に改定しました。

ただし、「例えば、当該元号が会社の創立時期、商品の製造時期、役務の提供の時期を表示するものとして一般的に用いられていることを考慮する」とされており、従前から「大正製薬」などのように既に一般的に特定の会社の商品を示すものとして定着しているものについては例外的に認められていましたが、なかなかこれに類するものとして商標登録されるのは難しいでしょう。

 

では、商号としても元号使用は駄目なのか?という疑問が出てきます。

しかし、これはOKなのです。

 

商号の選定・使用については、以下のものも含めていろいろ制限はあるものの、それ以外は自由なのが原則であり、元号使用についての制限はありません。

① 商号単一の原則

商人は複数の商号を保有することができますが、同一営業については同一営業所で複数の商号を持つことはできません。

② 会社の名称等に関する規制

会社は、株式会社、合名会社などその会社の種類に従って「株式会社」や「合名会社」などの文字を商号に用いなければならず(会社法62項)、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いることができませんし(会社法63項)、会社でない者は会社であると誤認されるおそれのある文字を名称や商号に用いることはできません(会社法7条)。

また、銀行など特定業種は、その業種を表わす特定の名称を商号に使用することが義務づけられており、また、これら以外の者がその業種を表す文字を商号に用いることが禁じられています(銀行法6条、労働金庫法8条、信用金庫法6条、保険業法7条、信託業法14条、農業協同組合法4条、水産業協同組合法3条、中小企業等協同組合法6条、消費生活協同組合法3条等)。

さらに、特定の法人に限って独占使用が認められている特定の名称は、当該法人以外の者がその文字を用いることはできません(日本銀行法13条、日本電信電話株式会社等に関する法律8条、日本たばこ産業株式会社法4条、成田国際空港株式会社法4条、株式会社日本政策金融公庫法51項など)。

③ 他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止

何人も、不正の目的をもって、他の商人や他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用することは禁じられています(商法121項・会社法8条、過料100万円以下の罰則あり。商法13条・会社法9783号)。

 

商業登記法27条は、同一の本店所在地に同じ商号の会社がある場合にはその商号を登記することができないとしていますが、同一住所でなければ、同じ都道府県あるいは同じ町内に同じ名前の会社があったとしても、登記することができます。

逆にいうと、商号は、せいぜい同じ本店所在地でなければ、独占使用ができず、商標のような全国的な独占的使用権を持つものではないので、元号使用について目くじらを立てるほどのことはないということと、元号を入れた商号となると、選択肢が多くなく、どうしても類似しがちであるため、他人と誤認させる名称使用としての制限で足りるということかもしれません。

元号を商号に使用しても、他にも同工異曲の商号が沢山あるようでは、結局、その中に埋もれてしまって差別化は困難ですし、ブランド力は地道に信用を積み重ねることでしか得られないということも考える必要があるでしょう。

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