「離婚するときに考えること②~その理由で離婚は手続的に可能か?」
2023.08.09|甲斐野 正行
最高裁の令和4年司法統計年報(https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/659/012659.pdf)によりますと、下記の表のとおり、離婚手続の申立動機は、夫・妻双方とも「性格が合わない」が最も多く、2番目以降は、夫の申立動機は「異性関係」・「浪費」・「性的不調和」・「暴力」・「病気」・「酒を飲み過ぎる」の順、妻の申立動機は「暴力」・「異性関係」・「浪費」・「性的不調和」・「酒を飲み過ぎる」・「病気」の順です。
「性格が合わない」というのは、他の動機ではすんなり当てはまらない諸々のケースをひっくるめたものと思われ、私達が実際に離婚のご相談を受ける場合でも、そういうケースが多いというのが実感ですね。
では、こうした動機で離婚が手続的に認められるか?というと、必ずしも、というところです。
もちろん、夫婦双方が離婚することに合意すれば、それはオールマイティです。
裁判所のお世話にならなくても、夫婦だけの合意で、離婚届に双方が署名押印して、役所に届け出れば離婚できます(逆に、離婚届に双方が署名押印して役所に届け出ることが必須です。)。
また、離婚調停や離婚訴訟のように、一旦は裁判所のお世話になっても、双方がその手続の中で離婚に合意すれば、離婚できます。調停中なら調停離婚、訴訟中なら和解離婚です。
しかし、一方が離婚したくても、もう一方が最終的に離婚することに合意しない場合に、離婚を拒否している配偶者の意思に反してでも離婚するには、離婚裁判で勝訴判決をもらう必要があります。
そして、離婚裁判で、裁判所が離婚を認める場合というのは、法律で決まっていて、これに限定されます。
民法770条1項がそれで、以下の5つのいずれかの事由がある場合です。
① 配偶者に不貞な行為があったとき。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
では、最初に挙げた、離婚手続の申立動機がこの法定離婚事由に当たるかというと、2番目に多い「異性関係」が不貞行為であれば(不貞行為を認定できるかというハードルはありますが)、①号の離婚事由に当たります。
また、「病気」が精神疾患の場合には、その程度が強度で回復が見込めないほどであれば、④号の離婚事由に当たる可能性があります。
しかし、精神疾患以外の「病気」や、「暴力」・「浪費」・「性的不調和」・「酒を飲み過ぎる」は、民法770条1項は離婚事由として規定していません。
では、これらの動機では、相手が離婚に同意しない限り離婚できないのか、というと、これはその事由や程度によります。
軽々に離婚を認めるのは適切ではない一方、社会の結婚観も時代により変わってきていて、離婚を余りに限定的にすることで、婚姻継続を強いるのも適切ではないと考えられるケースも生じています。
そこで、上記の⑤号の「婚姻が継続し難い重大な事由」が、①号から④号にストレートに当たらないケースでも、離婚を認めるために柔軟に対応するための規定として機能しています。
次回は、それを具体的にみてみましょう。