交通事故(過失相殺)の話【No.5】
2017.08.22|根石 英行
またこの過失相殺の延長上の考え方として,素因減額というものがあります。
これは怪我の場合に問題となるもので,被害者に何らかの病気や要因があって,それが事故によって発現することで,そういう素因がなければ治療が速く終わっていたとか,後遺症がそこまで悪くならなかったという場合には,そういう素因の基づく損害の全部を加害者が弁償する必要はない,というものです。
そういう素因が持病にまでなっていたら,ある程度減額されてもという考え方もありえるかと思うのですが,症状として発現しておらず,事故で症状がようやく出てきたとしても,減額できるというのが裁判所の考え方です,加齢による骨の変形は避けられず,それが病気と言えるまでになっていなくても,事故による痛みが悪化する原因となることは結構あるのです。
そういう場合にも痛みの全部が事故によるものであるとは言えない,というのもなかなか納得しにくいところですが,そういう扱いが裁判上認められています。