「裁判手続のIT化 -パート1」
2018.09.18|甲斐野 正行
今年2月2日のブログで、民事裁判の訴状や書面をインターネットで提出できるよう最高裁が検討を始めたという話をとりあげましたが、これがいよいよ本格的な動きとなっており、日弁連や各地の弁護士会も含めて検討が開始されています。
政府の「未来投資戦略2017」の一環として、内閣官房日本経済再生総合事務局に裁判手続等のIT化検討会が発足し、昨年10月から今年3月まで合計8回の検討会が開かれ、今年3月30日に検討結果として、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-」(以下「取りまとめ」)が公表されています。ご興味のおありの方は、
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/saiban/pdf/report.pdfをご参照ください。
裁判手続のIT化が、何かと使い勝手の悪い日本司法の利便性向上を目的としていることは当然ですが、「取りまとめ」によると、「欧米を中心に裁判手続等のIT化が既に進められてきており、・・・アメリカ、シンガポール、韓国等では、IT化した裁判手続等の運用が広く普及・定着しているほか、ドイツ等でも、近年、IT化の本格的取組が着実に進展している。現に、世界銀行の“Doing Business”(注:世界銀行が毎年発表する、世界190か国を対象とし、事業活動規制に係る10分野を選定し、順位付けしたもの)2017年版では、「裁判手続の自動化(IT化)」に関する項目について、我が国に厳しい評価が示されており、我が国のビジネス環境や国際競争力の観点から見た場合、利用者目線に立った裁判手続のIT化を更に進める必要があるのではないかとの声が高まりつつあった。」ということです。
つまり、近年の債権法改正や個人情報保護法改正と同様、経済のグローバル化の中で日本の国際的競争力の強化のためのインフラ整備という意味が大きいように思われます。
「取りまとめ」では、現行法の枠を超えて、訴えの提起・申立てからその後の手続に至るまで、基本的に紙媒体の存在を念頭に置かないIT化への抜本的対応が必要とされています。紙媒体をなくすことの実現性はともかく、かなりドラスティックな改革が想定されていて、「3つのe」というキャッチコピーでその内容を表していますので、次回以降、その内容を見ていきたいと思います。
以 上