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「裁判手続のIT化ーパート4」

2019.04.26|甲斐野 正行

パート1~3でみましたように、政府の「未来投資戦略2017」の一環として、内閣官房日本経済再生総合事務局に裁判手続等のIT化検討会が発足し、今年3月30日に検討結果として、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ-「3つのe」の実現に向けて-」(以下「取りまとめ」)が公表されましたが、この「3つのe」とは、

  ①「e提出(e‐filing)」

  ②「e事件管理eCase Management)」

  ③「e法廷eCourt)」

とされています。

 

 パート3までは①の「e提出」、②の「e事件管理」でしたが、今回は「e法廷」です。

 

 取りまとめによれば、「e法廷(e-Court)の実現として、利用者目線からは、当事者等の裁判所への出頭の時間的・経済的負担を軽減するため、民事訴訟手続の全体を通じて、当事者の一方又は双方によるテレビ会議やウェブ会議の活用を大幅に拡大するのが望まし」く、「テレビ会議やウェブ会議は、例えば最寄りの裁判所や代理人の弁護士事務所等に所在して対応することが可能で」あり、「テレビ会議やウェブ会議の活用によって、従来から指摘されてきた当事者の遠方の裁判所への出頭の負担や期日調整の困難さの軽減につながる」「争点整理手続においては、特にテレビ会議やウェブ会議・ITツールの活用等を通じて、より効率的で充実した争点整理の実現が望ましく、その早期実現が期待される。」とされています。

 

 これは現状の民事訴訟運営の問題点として、第1回口頭弁論期日については、擬制陳述制度を利用するなどして被告が出頭せず、期日が形式的なものとなることが少なくないことや、その後の争点整理手続も、口頭での議論や整理が不十分なままに主張書面の応酬に陥り、全体として冗長になりがちではないかという指摘があること、利用者から、遠方の裁判所への出頭の負担や期日調整の困難さが指摘されており、裁判に対する参加機会の確保や審理の効率化(司法アクセスの向上)の観点からも、ウェブ会議等の活用に対する利用者ニーズは特に高いと考えられること、などを踏まえたものです。

 

 現行法下でも、以下のとおり、e法廷のために既に一定の法整備がされているのですが、やはり十分ではないということです。

 

① 弁論準備手続(民訴法1703項)

 一方当事者が出頭すれば、他方当事者は出頭せずにウェブ会議等を利用することができる。

→双方不出頭ではウェブ会議を利用した弁論準備手続はできない。

② 書面による準備手続(民訴法1763項)

 当事者の出頭なしに、準備書面の提出等によりウェブ会議を用いた争点整理を行うことができる。ただし、期日ではないため、準備書面等の陳述や書証の取調べはできない。

→口頭弁論期日にまとめて陳述、あるいは一度弁論準備手続を行うなどの工夫が可能。

③ テレビ会議システムを利用した証人尋問(民訴法204条)

 証人等が遠隔地に居住している場合などの要件を満たす必要がある。

 

 なお、③のテレビ会議システムによる証人尋問はいかにも便利そうなイメージがありますが、証人尋問自体が裁判の行方を決する重要な手続であり、尋問に答える証人の様子も含めて裁判官の心証形成につながることから、現状では、画面を介した尋問は、隔靴掻痒という印象もあり、そのことから(少なくとも重要な証人については)拒否反応を示す弁護士も多いところです。

 これは尋問技術的な問題なのか、それとも、機器システムの画面の大きさや解像度なりで解消されるものなのか、の検証も必要かもしれません。

 

 ちなみに、アメリカでは、1990年代からビデオ会議システムの導入が開始され、特に刑事訴訟では被告人の護送コスト削減・安全確保のために多くの事件で利用されているそうです。民事訴訟でも、昨今ウェブ会議の利用が増加傾向にあり、口頭弁論期日や人証調べ、特に鑑定人(医師等)の証人尋問で利用する場合があるそうで、当事者及び裁判官の移動時間・コストの削減に効果的と評価されているようです。

 

 現在、日本各地でIT裁判についての模擬裁判が実施されており、今後、その結果を踏まえて実務的・理論的な問題点が検討されることになります。

 

                                                                     以 上

 

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