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弁護士ブログ

「民事裁判のIT化-フェーズ1模擬裁判を受けての課題①」

2019.08.19|甲斐野 正行

  本年711日のブログで、民事裁判手続のIT化に向けて、現行法下でも、IT機器の整備等により実現可能なものを「フェーズ1」と位置づけ、前倒しでやってみよう、ということになった話をいたしました。

 来年(令和2年)2月頃に、知的財産高等裁判所の他、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松の各高裁所在地の地裁本庁で運用開始することとなり、各地でその模擬裁判が実施され、広島でも本年710日に実施されました。

 

 公開の法廷で行う正式の裁判手続である「弁論」には、当事者が裁判所の法廷に実際に出頭することが原則的に不可欠ですが、非公開の争点整理手続である「弁論準備手続」(少なくとも一方当事者の出頭が必要)と、「書面による準備手続」(期日は開かれず、双方当事者の出頭は不要)では当事者が裁判所に出向くことが必ずしも必要ではありません。 そして、これまでは、当事者の一方が遠方であるなど裁判所に出頭することが困難な場合には、弁論準備手続で、出頭が可能な片方の当事者が裁判所に出頭し、出頭が困難な当事者が電話会議システムを利用して参加することで争点整理を円滑に進めることをしてきたわけですが、双方不出頭でできる書面による準備手続については、私の経験上あまりというか、ほとんど利用されてこなかったと思われます。

 これは、書面による準備手続は、当事者が出頭せず書面交換等だけで争点整理を行うので、手続自体が簡単なものではなく、経験豊かな裁判官が担当するのが適切ということから、地裁では裁判長が主宰しなければならず(経験豊かな裁判官で構成される高裁では受命裁判官でも可、民訴法1761項)、したがって単独事件ではそもそも利用できないこと、当事者が出頭しない建前なので、予め整理すべき事項を裁判所が書面で指示する必要があり、裁判所的にも手間がかかること、当事者が出頭しないため、書面による準備手続は,あくまでも期日外の予行的手続で、確定的な訴訟資料が存在せず、要証事実の確認もできない建前であること(まがりなりにも当事者が出頭する準備的口頭弁論や弁論準備手続では訴訟資料が提出され,弁論準備手続では書証の証拠調べも可能)など、使い勝手が悪いし、当事者が全く出頭しない手続というのは裁判の形骸化のニュアンスもあり、抵抗感があるためではなかったかと思います。

 

 当事者の一方が裁判所に出頭するのなら、弁論準備手続を電話会議システムに代えてウェブ会議システムで行うということになりますが、双方不出頭でもできるというのがIT化の売りになるなら、これまで活用されてこなかった書面による準備手続をウェブ会議システムで行うことで活用することになるでしょう。

 そして、普通は、原告から訴状が裁判所に提出されると、裁判所が第1回口頭弁論期日を指定して被告に訴状等を送達するのですが、書面による準備手続を行う場合には、第1回口頭弁論期日を取り消して、第1回口頭弁論期日前に争点整理を進めることが多くなると思われ、第1回口頭弁論期日で訴状と答弁書が陳述されてから、おもむろに争点整理に入るというこれまでの手続の流れが大きく変わることになろうかと思われます。

 書面による準備手続が合議事件でないとできないという足枷は、フェーズ1がもともと試行的な運用で、できるだけ沢山の裁判官に関与させて経験させた方がよいという面がありますので、適切な事件を積極的に合議事件に回すことで問題にはならないと思われます。また、その他の手続的な使い勝手の悪さも、今後の法改正に向けての問題点の洗い出しにつなげるという前提なら、とりあえず問題にはしなくてもよいでしょう。

 課題はもう少し即物的なところや、秘密保持といったところにありそうで、次回にこれを考えてみたいと思います。

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