• 業務内容
  • 弁護士紹介
  • 活動報告
  • 事業所概要
弁護士ブログ

「改正個人情報保護法~2022年4月全面施行③~サイバー攻撃による個人情報流出の多発・多額ではない慰謝料も沢山集まると・・・」

2022.02.24|甲斐野 正行

    2020年6月に公布された改正個人情報保護法が2022年4月に全面施行されることになっていますが、注意すべき点を前回に続いて見ていきます。

 先月17日に公開された東京商工リサーチの調査によると、昨年上場会社とその子会社で起きた情報流出事故は前年比で3割増しの137件、574万人分であり、同社が調査を始めた2012年以降最悪とのことで、その原因として、ウイルス感染・不正アクセスが68件と半数を占め、2位が誤表示・誤送信の43件だそうです。
  詳しくは↓をご参照ください。

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210117_01.html


 EUでは個人情報に対する規制が強く、行政が流出事故を起こした企業に対して巨額の制裁金を課す事例も多く見られ、これと比較して、流出時の法責任が軽い日本での危機管理意識の低さにつながっているのではないか、との見方もあります。

 今改正もこうした流れの中で捉えることができ、前回、前々回に触れましたように、今改正では、個人の権利保護が強化されるとともに、個人情報取扱事業者の責任も強化されます。

 流出・漏えい関連では、現行法では一定の法違反がある場合に限られる、本人の個人情報取扱事業者に対する自己を識別できる個人データの利用停止・消去・第三者提供の停止といった請求権(現行法30条)が、改正法では、法違反がない場合でも「重大な漏えいなどが発生した場合」などには行使できることになります。

 また、これの裏表として、現行法では、個人情報取扱事業者は、漏えい事故が発生したときは、個人情報保護委員会に報告する法的義務はなく、取扱事業者の個別対応に委ねていましたが、今改正では本人の権利利益の侵害が大きい漏えい等が発生した際には、取扱事業者の個人情報保護委員会への報告義務と本人への通知義務が定められました(改正法22条の2)。

 日本では、個人情報漏えいによる慰謝料は、氏名や住所、電話番号、メールアドレスなど一般的な連絡先が漏えいにとどまり、第三者に悪用されるなどの「二次被害」もないようなケースであれば、一人当たり3000円~5000円というところですし(ベネッセコーポレーション事件・東京地判H30.12.27)、それ以上に人に知られたくない(例えば病歴や信用情報など)配慮を要する情報が流出した場合や二次被害があった場合でも、2~3万円台というところです(TBC顧客アンケート漏洩事件・東京地裁H19.2.8)。

 もちろん、上記のように、●●事件といって後々までその事業者名で事件が残るため、その風評被害も無視できないものではありますが、日本の裁判所の認める慰謝料額が仮にこの程度のままであったとしても、改正法により漏えい事故の本人への通知義務が課されることにより、通知を受けた多くの人が集まって賠償請求訴訟を起こすことが容易に想定され、その数が多くなれば、結局、会社として負担する額は多額にのぼります。

 さらに、こうした漏えいに対する国際的な厳しい扱いの流れの中で、日本の裁判所の認める慰謝料額も、次第に増額されている可能性も否定できませんから、尚更です。

 そうすると、今改正を受けて、取扱事業者は、危機管理意識を高めて、ふんどしを締めて臨むことが望ましいでしょうね。

 次回ももう少し今改正について見ていきます。

 

過去の関連ブログ

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

2022.01.13

「改正個人情報保護法~2022年4月全面施行①」

2022.02.01

「改正個人情報保護法~2022年4月全面施行②~本人の権利の拡充」

 

最新情報

2023.08.22

「離婚するときに考えること③~「暴力」という理由で離婚は手続的に可能か?」

2023.08.09

「離婚するときに考えること②~その理由で離婚は手続的に可能か?」

2023.08.03

「離婚するときに考えること①」

2023.04.10

「相続で後悔しない~その3:相続の基本ルール③・寄与分」

2023.04.05

「相続で後悔しない~その2:相続の基本ルール②・プラスの財産とマイナスの財産」

過去の記事

2021年09月

2021年10月

2021年11月

2021年12月

2022年01月

2022年02月

2022年03月

2022年04月

2022年05月

2022年07月

2022年09月

2022年11月

2023年01月

2023年03月

2023年04月

2023年08月

タグ

甲斐野正行 その他 中井克洋 川崎智宏 根石英行 吉村友和 松田健 交通事故 民法 勉強会 刑事 相続 裁判手続IT化 IT化 民事 遺言 企業法務 成年後見 周南事務所 債務整理 離婚 講演会

弁護士法人
広島メープル法律事務所
HIROSHIMA MAPLE LAW OFFICE
side_pic_access01.jpg side_pic_access02.jpg
【広島事務所】
 〒730-0004 広島市中区東白島町14-15
 NTTクレド白島ビル8F
 ico_tel.png 082-223-4478 ico_fax.png 082-223-0747
 受付時間:月〜金曜 9:00〜18:00

【周南事務所】
 〒745-0005
 山口県周南市児玉町2丁目5番1号
 三星児玉ハイツ1-D
 ico_tel.png 0834-34-1645 ico_fax.png 0834-34-1646
 受付時間:月〜金曜 9:00〜18:00

※オンライン相談にも対応しております。

side_bnr01.jpg side_bnr02.jpg side_bnr03.jpg side_bnr04.jpg side_img_soudan.png side_btn_recruit.png