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「翔んで埼玉」~漫画の実写化の稀な成功例

2019.04.12|甲斐野 正行

「埼玉県人にはそこらへんの草でも喰わせておけ!」

「埼玉なんて言ってるだけで口が埼玉になるわ!」

 

先日、映画館で話題の「翔んで埼玉」を観て参りました。

 

映画界は世界的にコンテンツ不足で、漫画・コミックの実写化が相次いでいますが、まずほとんどは制作者側の力不足で無残な結果に終わっているというのが私の認識です。

最近でも、士郎正宗の「攻殻機動隊」を原作とするアメリカの「ゴースト・イン・ザ・シェル」(2017年)も中途半端で残念な作品になってしまったように思います。

原作とするほどの漫画はヒットして相当な長さと内容になっているわけですから、これを1時間半~2時間弱の尺に収めるだけでも難事であり、まして単なるダイジェストではなく、原作とは別の魅力ある1本の作品とするのは大変なことです。さらに、漫画原作の読者のそれぞれの頭の中のイメージや愛情があり、それとの比較になりますから、いよいよ評価が厳しくなります。

その意味では、「翔んで埼玉」は、原作自体が途中で終わって完結しておらず、恐らく作者の魔夜峰央も読者もさしたる思い入れはないでしょうし、映画制作者側で手を入れる余地が十分あり、話を膨らませたり、翻案しても、原作の世界観や味が損なわれるリスクは少ないといえます。

ブロードウェイで大ヒットし日本でもタカラヅカで演じられたミュージカル「スカーレット・ピンパーネル」も、原作の「紅はこべ」が内容的にスカスカなために、翻案してかえって良い作品になったのと似ています。

 

私は、原作の漫画は元々読んでいましたが、冒頭に挙げたような過激なセリフや、出身地により差別が行われ、埼玉から東京に出るには通行手形が必要な架空の日本で、アメリカから東京の名門高校に転入してきた容姿端麗な御曹司(名前もタカラヅカの往年のトップ「麻美れい」に因んだ「麻美麗」)が実は埼玉県民であり、虐げられる埼玉県民を解放する運動を展開するというあんまりな設定に趣向を感じたものの、時代的にタモリの埼玉や千葉いじり(「ダ埼玉」などが流行語になりました)の後追い的な感が否めず、話としても中折れ的に終わってしまったので、残念な印象でした。

 

それが時が流れて原作がリバイバル的に注目を集め、映画化されるに至ったのですが、原作が尺的に足りないところをうまく補って再構成しています。

 

東京の男性と結婚し埼玉を脱出して東京での生活を夢見る娘が、埼玉への地元愛にこだわる両親に反発しながら、結納をするために車で埼玉県熊谷市から東京へ向かうロードムービーとして話を転がしていき、原作としての埼玉解放運動は、車中のラジオから流れる都市伝説として語られていきます。

埼玉(を含む北関東)へのディスりを地元民としてのぼやきに見せ、かつ、原作の作り事感を都市伝説として違和感なく落とし込む翻案です。既に「ダ埼玉」を経験してきている上、大都市「さいたま」市を擁するからこそ、シャレとして成り立つ面があるとはいえ、特定の地域への半端ないディスりが内容ですから、制作者側として気を遣ったことがよく分かります。

その一方で、都市伝説部分自体は、中途半端にせず、思いっきり突き抜けた演出にしており、笑わせます。コメディは照れたり、ためらったりしては駄目ということですね。

 

40代のGACKTが主人公の転校生ということ自体どうかというところですが、原作が魔夜峰央らしくコスチュームプレイですし、BL的要素満載ですから、これを演じて絵として耐えられるのはGACKT(それも若い頃のではなく、今のスタイルが確立したGACKTだからこそ)くらいしかなく、このキャスティングはGJです。

 

埼玉を含む北関東をご存知ならより笑えますし、知らなくても笑える作品でしょう。

ちなみに、私の家内の友人は、東京の西方面の在住で2回観たということです。

以 上

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