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弁護士ブログ

「改正相続法施行⑥ 遺言書保管制度」

2020.07.09|甲斐野 正行

 2018年(平成30年)7月に,相続法制の見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と,法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立しました。

 

 これまでご紹介してきましたように、そのうち遺留分の見直しや特別の寄与制度などが昨年7月1日から施行され、今年4月1日に配偶者居住権制度が施行されたのですが、最後に残されたものとして、「自筆証書遺言にかかる遺言書保管制度」が今年7月10日から施行されます。

 

 遺言には、

1.病気・事故・災害等の緊急状況下で利用できる特別方式遺言(緊急時遺言・隔絶地遺言)

2.平常時の普通方式遺言

があり、2の普通方式遺言には、

①自筆証書遺言(遺言者が「自分で」遺言書のほぼ全部を自筆で書いて作成し、自分で保管)

②公正証書遺言(遺言者が遺言したい内容を、公証人に遺言書として作成してもらい、保管してもらう)

③秘密証書遺言(遺言者が「自分で」作成した遺言書を公証人役場に持っていき、遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言書の「存在」のみを公証人に証明してもらう)

の3種類が用意されています。

 

 1の特別方式はまさに特殊なものですので、通常は2の普通方式遺言が利用され、その中では、①の自筆証書遺言が費用もかからず簡便ですので一番多く利用されていると思われます。

 ただ、自筆証書遺言は、上記改正までは、その全文を自分で書いて署名押印して完成させなくてはならず、その方式が厳格で、下手をすると遺言が無効になってしまうおそれがありましたし(上記改正で、自筆証書遺言の方式が一部緩和されましたが、財産目録の部分に限り、自筆でなくてもよくなっただけです。こちらは既に2019年1月に施行されています。)、遺言者が自分で保管することから、紛失してしまったり、遺言者が亡くなったときに、その存在自体を相続人が知らなかったり、分かっていても、廃棄・隠匿・改ざんのおそれがあるなどのリスクがありました。

 

  ちなみに、自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければならず、封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。

 検認は,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など「検認の日現在における遺言書の内容」を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

 しかし、検認の手続は、あくまで遺言書の存在及び内容を相続人に知らせ、「検認の日以降」の偽造・変造を防止するにとどまり、それ自体遺言の有効無効を判断する手続ではありませんし、そもそも遺言書が隠匿されたり、検認日前に改ざんすることを防止することはできません。

 

 遺言は重要なものですから、きちんと気をつけて後でトラブルにならないように書くべきですから、方式が厳格なのはやむを得ない面があるのですが、保管については、紛失したり、存在が分からなかったりすると、せっかくの遺言者の意思が実現されませんし、一部の相続人だけが知っていると、今度は改ざん等が疑われてトラブルになることが多いことから、それなりの公的な保管制度が設けられれば、相続トラブルを予防できる面があります。

 

 そこで、

・全国一律のサービスを提供できる

・プライバシーを確保できる

・相続登記の促進につなげることが可能

という観点から、法務局による、自筆証書遺言書の保管制度が創設されたのです。

 

 この制度が利用される場合は、法務局で遺言書の原本を保管し、画像データ化もされますので、紛失や改ざんが防止できます。

 そして、法定相続人は、相続開始後に法務局に対し遺言書の証明書の交付請求・遺言書の閲覧請求が可能となり、法務局は、相続人の一人に遺言書の証明書を交付したり遺言書の閲覧をさせた場合,他の相続人に遺言書が保管されていることを通知することになります。

 

遺言者がする手続についての詳細はこれをご覧ください。

 

www.moj.go.jp/content/001318460.pdf

 

また、相続人等がする手続についてはこちらをご覧ください。

 

http://www.moj.go.jp/content/001318461.pdf

 

費用面はこちらをどうぞ。

 

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00010.html

 

 

 そうすると、この保管制度を利用する限りは、その上更に家裁での検認の手続をする意味がありませんから、検認の手続は不要となります(この制度を利用しない場合は、従前どおり検認の手続が必要です。)。

 

 なお、保管申請した自筆証書遺言書を撤回したい場合には、法務局に保管申請の撤回の手続をすることになり、その点は面倒かもしれませんが、遺言をどうするかはとても大事なことですから、その程度は我慢すべきと思いますね。

 

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