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弁護士ブログ

「河井案里さんの連座制と繰り上げ当選」

2020.06.22|甲斐野 正行

 

 

 自民党の河井案里参院議員が当選した昨年7月21日の参院選で車上運動員に違法報酬を支払ったとして、公職選挙法違反(買収)罪に問われた同議員の公設秘書に対し、今月16日、広島地裁は懲役1年6月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月)を言い渡しました。

 

 これが確定すれば、河井案里さんは連座制により議員失職の可能性があるわけですが、これに関連して、その場合、次点で落選した溝手顕正前参議院議員が繰り上げ当選になるという趣旨のニュースや論説を目にすることがありました。

 

 
 
実際にそうなれば、劇的な復活ということになるのですが、溝手さんにはお気の毒ながら、現行制度上、そうはなりません。


 「繰り上げ当選」とは、当選者が辞職したり死亡したりして欠員が生じた際に、落選者の中から補充して当選者を決めることですが、繰り上げ当選の有無や当選者の決定方法は、選挙の種類や欠員が生じた時期によって以下のようになります(公職選挙法第97条、第97条の2、第112条)。


 

 

 

 

 

 選挙の種類

 

 

繰り上げ当選が認められる期間

 

繰り上げ当選の有資格者

 

 

参議院選挙区の議員

地方議会議員

 

 

 

 

 

選挙日から3カ月以内

 

 次点者(最下位当選者の次の順位)

 

 

選挙日から3カ月経過

 

 

・当選者と同数の票を獲得し、くじ引きの結果落選した者

・当該者がいなければ繰り上げ補充はない

 

衆議院比例代表の議員

参議院比例代表の議員

 

 

 

 

 

 

当該選挙で選ばれた議員の任期中

 

 

 

 

 

 

 

 

・比例名簿の次点者(最下位当選者の次の順位)

・衆議院の場合、重複立候補(小選挙区と比例代表の両方に立候補すること)をした候補者については、小選挙区で供託金没収点(当該小選挙区の有効投票数の10分の1)を上回った者

・その党の名簿登載者が全員当選した場合は、繰り上げ補充はない

 

衆議院小選挙区の議員

地方自治体の首長

 

同上

 

 

 

 

・当選者と同数の票を獲得し、くじ引きの結果落選した者

・該当者がいなければ繰り上げ補充はない

 

 

 

 

 河井案里さんと溝手さんは、昨年7月の参議院の広島県選挙区で戦った候補者であり、既に3か月を経過していること、溝手さんは、投票数において2位当選の河井案里さんに及びませんでしたから、仮に今日河井案里さんが辞職したとしても、溝手さんは繰り上げ当選の有資格者ではないことになります。 


   これに対し、参議院選挙の比例代表では、例えば、平成28年7月10日執行の参議院比例代表選出議員選挙において選出された長沢広明氏が選挙日から1年以上経過した平成29年9月26日辞職し議員に欠員が生じた場合でも、同年10月12日に選挙会が開催され、竹内真二氏が繰上補充による当選人と決定されました。
 

 このあたりがちょっと勘違いをしやすいのかもしれません。
 

 溝手さんは、昨年の選挙を最後の選挙として臨まれており、これを受ける形で昨年11月に旭日大綬章を授与されておりますから、補欠選挙があるとしても、ご自身が出馬されることはないのではないかと推測しますが、広島県では、補欠選挙があることを想定して、既に水面下でいろいろと動きがあるのでしょうね。

 

 

 

                                 以 上